平成30年8月31日 町長メッセージ

ページ番号1002027  更新日 2022年2月10日

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芸術祭寄稿文(大地の芸術祭をめぐって)

広野町、楢葉町、富岡町の職員をはじめ、経産省、福島県、地元企業の方々25名の参加を得て、8月19日から20日にかけ、新潟県十日町市と津南町で開催されている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」の視察研修を行った。
大地の芸術祭は、「人間は自然に内包される」を基本理念に、2000年から3年に1回開催されており、里山や田園への作品展示、廃校を活用した美術館等、地域全体に約380点ものアート作品が展示されている。
私は、当町に復興の応援でご縁があった方から、大地の芸術祭を紹介され3年前に訪れ、芸術を通して被災地“双葉地方”を結ぶという構想を抱き、本研修を企画したものである。
十日町市現代美術館「キナーレ」で、芸術祭の総合ディレクターである北川フラム氏にお会いすることができた。北川氏からは、集落に協力を呼びかけながら企画を進めてきたこと、地域の方々が芸術祭に関わるうちに変わってきたこと等、大変示唆に富んだ話をいただいた。
十日町市願入地区の「うぶすなの家」は、2004年の中越地震で被災し、空き家となっていた古民家を、陶芸作家のミュージアムとして再生した建物である。ここで心に残ったことは、わずか4軒の集落となったこの地区に暮らす女性が、芸術作品のこと、地域の暮らしのことを語りながら、いきいきと働く姿であった。限界集落にあっても、目的を持って生きることが、人をこのように輝かせるものなのかと。
津南町では、磯辺行久氏の作品群を鑑賞した。信濃川のかつての流路をポールで再現した「川はどこへいった」、2011年の長野県北部地震によって発生した土石流の流出範囲をポールで示した「土石流のモニュメント」等、いずれも、自然の変化を様々な観点から可視化したいという磯辺氏の想いを感じるとともに、このような自然を生かしたアートは、被災地における芸術作品としても、可能性を感じるものであった。
私がこの視察研修を通して脳裏に刻んだことは、過疎化と高齢化に加え、地震による被害を被ってきたこの地域が、芸術祭というふるさとを愛する、崇高な人間社会の願いに向かい結集する、人間力の強さ、関わっている方々が輝いていることの素晴らしさである。
今、双葉地方は、復興・創生に向かって懸命に歩みをすすめているが、原子力災害は、地域によって復興段階が異ならざるを得ないという状況をもたらしている。今日を迎えるに当たって、国内、国際社会からの温かい御厚情、御支援をいただき、原発事故被災地が、ふるさとを取り戻すという大きな目標に向かって力を結集していくには、芸術祭やスタディツアー等で地域を結ぶ取組みが、新たな時代の共生社会のまちづくりに大きな可能性があると捉えられる。
広野町で10月に開催する国際フォーラムでは、芸術祭に関するセッションを予定している。当地域での芸術祭の可能性について、大いに議論を深めたいと考えている。

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