いつかまた帰ってきたいと思えるような町にしていきたい

磯辺吉彦

多世代交流スペース「ぷらっとあっと」館長 磯辺吉彦さん

広野町出身。東日本大震災の後、有志で始めたボランティア活動をきっかけに、町に「にぎわい」と「なりわい」を取り戻そうと活動に取り組む。2016年NPO法人広野わいわいプロジェクトを立ち上げ、事務局長を務める。多世代交流スペース「ぷらっとあっと」館長、合同会社ちゃのまプロジェクト共同代表。

 

まちの中に、みんなの“居場所”があったらいいなと思いました

ぷらっとあっと
多世代交流スペース「ぷらっとあっと」

多世代交流スペース「ぷらっとあっと」は、誰でもぷらっと立ち寄れるアットホームな空間を、との思いから生まれた場所です。東日本大震災の後、広野町にはたくさんのボランティアの方が来てくれました。彼ら彼女たちが屋根の下で休めるところがあったらいいなと思ったのがきっかけで、同じように「場づくり」を考えていた2人(青木裕介さん、大場美奈さん)とともに構想を練り始めました。

アイアイ会館という建物で倉庫として使われていた1階をお借りすることができ、ふたば未来学園の生徒さんや地域の人たちとワークショップでどんな空間がいいか話し合いました。皆さんと一緒にDIYでつくりあげ、2020年にプレオープン。本格オープンしたのは翌年の4月です。レンタルスペースとしてイベントや展示会などに使っていただけるほか、普段は無料開放しているので、地元の小中高生や地域の人、町外から来た人などが気軽に訪れ、交流したり、思い思いに時間を過ごす場所になっています。


広野町をなんとかしなくちゃ、との思いが募っていきました

磯辺さん
広野町への思いを語る磯辺さん

私は広野町で生まれました。東日本大震災の後、勤めていた会社を早期退職し、一時、町を離れました。戻ってきたのは2012年です。当時の広野町は人が少なくて、寂しかったですね。支援物資が集まってきていましたが、仕分けに手が回っていないことを知り「なんとかしなくちゃね」と、有志で仕分け作業のボランティアをしました。

翌年、いわき市のNPO法人ザ・ピープルが、津波被害を受けた畑で塩害に強いオーガニックコットンの栽培を始め、広野町での生産に私も関わるようになりました。そのようなつながりの中で仲間も増え、東京の支援団体などの協力もあり、広野町に人を呼び戻そうとイベントを始めたのが2015年頃です。広野わいわいプロジェクトの前身となる会が活動の中心となり、二つ沼公園でパークフェスなどを行いました。


町に「にぎわい」と「なりわい」を。広野わいわいプロジェクト発足

まちなかマルシェ
第60回を超えた「まちなかマルシェ」
(写真は広野わいわいプロジェクトFacebookから)

NPO法人広野わいわいプロジェクトが発足したのは2016年です。交流人口と関係人口を増やそうと活動してきました。その年の3月に防災緑地を森にしようという事業があり、オーナー制度で寄せられた2,500本の苗木も植えられました。我々は県や町と協定を結び、植樹した場所の管理を10年間担うこととなりました。この森づくりやコットン畑には、折々の作業に町内外から多くのボランティアの方が来てくれています。

「にぎわい」づくりでは、いろいろなイベントを行ってきました。「まちなかマルシェ」もその一つです。駅前通りに人を呼ぼうと企画し、毎月開催しています。5年くらい続いていて、60回を超えました。当初の駅前から場所を少し移動して、今は「ぷらっとあっと」がその会場になっています。広野駅前通りについて、昭和の街並みの記憶を参加者が話し、マップに残していく「思い出交歓会」も行いました。当時のにぎわいを思い出すとともに、町外の参加者にとっては新鮮な驚きもあるようで、楽しい時間となっています。

「なりわい」づくりにおいては、ワークショップや専門家の協力により、地域資源を活用した商品の開発などを手がけています。広野町の新たな特産品や仕事の場ができることを目指しています。また、地主さんのご厚意で、災害公営住宅の近くに、貸し農園「笑顔サンサン農園」をつくりました。入居者に呼びかけ、一緒に畑作業をしたり、子どもたちに芋掘り体験をしてもらったりしています。ここもまた、青空の下の交流の場になればいいなとの思いがあります。


移住者との関わりも生まれた、ちゃのまプロジェクト

多世代交流スペース
多世代交流スペース「ぷらっとあっと」

「ぷらっとあっと」の運営を担っているのは、合同会社ちゃのまプロジェクトです。運営のほかに、町からの委託事業で、移住を視野に試験的に住んでみたいという方に提供するお試し住宅の管理をしています。鍵をお渡しする際などに、移住希望者とお話しする機会も増えました。

移住者の方によく話すのは、広野町の人は人見知りで人懐こい、ということです。だから溶け込んでくださいねと。そして町でやりたいことをどんどん見つけてほしいと思います。「ぷらっとあっと」に来る地域の人は、「ここに来ると珍しい人に会える」とよく言います。そういう出会いの場所でもありたいと思っています。またお試し住宅は、アーティスト・イン・レジデンスでアーティストの方が広野町に滞在する際に利用することもあります。その作品が「ぷらっとあっと」に展示されたりして、新たな交流も生まれています。


町のなかで、子どもたちの記憶に残る楽しい体験をしてほしい

磯辺さん
「まだまだやりたいことがある」と語る磯辺さん

広野わいわいプロジェクトで活動を始めた頃は、「とにかく町を震災前の状態に戻さなくちゃ」との思いに突き動かされていました。そのうちに、そればかりではないぞ、といろいろな課題も見えてきて、次の活動につながってきたのだと思います。今振り返れば「突っ走ってきたな」という気がします。目の前にやるべきこと、やりたいことがいろいろありました。

町のこれからのことを考えると、やはり人づくりが大事ですね。ですから、子どもたちにたくさんの楽しい体験をこの町でしてほしいと思います。学校の教室では学べないようなことを、多世代の交流の中で学んでほしい。そして「広野ってこんなにすてきな町なんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。大人になって、町を出て行くことがあっても、誇りに思えるような、そしていつかまた帰ってきたいと思えるような町にしていきたいですね。住んでいる我々にとっても、どうすればより暮らしやすいまちになるか。やりたいことはまだまだ、実はあるんです。

 

〈多世代交流スペース ぷらっとあっと〉

広野町下北迫折返35-4 アイアイ会館1F

0240-23-6882

●営業時間 

火〜木・土/12時00分〜18時00分

日・祝/12時00分〜16時00分 

●定休日 毎週月・金曜日、夏季、年末年始 

ほか、町内でのイベント開催時など




このページに関するお問い合わせ

広野町役場
〒979-0402 福島県双葉郡広野町大字下北迫字苗代替35
電話:0240-27-2111 (代表) ファクス:0240-27-4167
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。