自ら未来を切り拓く力を育める社会へ
双葉みらいラボ拠点長 横山和毅さん
福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校 学校支援統括コーディネーター
認定ワークショップデザイナー
自ら未来を切り拓く力を育める社会へ
私が所属する「認定特定非営利活動法人カタリバ」は、創業から20年以上にわたり、子どもたちがどんな環境に生まれ育っても、自ら未来を切り拓く力を育める社会を目指して活動しています。都市や地方、震災の影響を受けた地域など、さまざまな環境で育つ子どもたちが、自分らしい未来を描き、実現できるよう支援を続けています。現在は、全国で事業を展開し、さまざまな教育課題にアプローチしています。事業は大きく2つの領域に分かれていて、ひとつは経済的な困難や社会的なハンディキャップを抱える子どもたちへの直接的な支援、もうひとつはすべての子どもたちが自ら学び、未来を切り拓く力を養うための教育モデルの構築です。学校の枠にとらわれず、子どもたちが自らテーマを見つけ、学びを深められるようなプログラムを提供し、彼らの可能性を広げています。さらに、子どもたちを直接支援するだけでなく、彼らを取り巻く大人たちとのパートナーシップにも力を入れています。学校の先生や教育委員会、企業と連携し、対話型の学習モデルや探究学習の推進をサポートしています。
地域課題の解決に生徒たちの探究を

私は2016年から、カタリバの拠点がある岩手県大槌町で3年間活動してきました。震災から5年が経過していましたが、町にはまだ多くの仮設住宅が残り、私自身もそこで生活していました。地域の人々と同じ視点で暮らし、復興の現場を直接見たことは、その後の活動において大きな経験となりました。2019年にはふたば未来学園へ異動となり、「学校の中にある新しい放課後の居場所」を届けることをコンセプトに誕生した 「双葉みらいラボ」 での活動が始まりました
興味を持てるものを見つけ、探究する

多様な背景を持つ生徒たちを支えるために、「双葉みらいラボ」ではさまざまな取り組みを進めてきました。最初に始めたのは学習の遅れが出ている点をどう補うか、そして心のケアをどうするかという点でした。震災により福島から各地に避難した子どもたちは、転校を繰り返すことで、学習の空白期間が生じるケースが多く見られました。その結果、学習についていけなくなり、自己肯定感が低下する子どもも少なくありません。そこで、テスト前の学習支援を小規模にスタートし、放課後の居場所づくりにも力を入れるようになりました。その後、学校との連携が進むにつれて、探究学習の授業やカリキュラム作りにも関わるようになり、さらには地域との共同活動やボランティアのコーディネートなども行うようになりました。学習支援から始まった活動が探究学習やキャリア支援へと広がり、地域活動とも結びついていきました。
また、双葉郡の外から移住してくる生徒や寮生活を行う生徒、いわき市など近隣自治体から通学する生徒もおり、彼らにとっては双葉郡のこと自体が初めて知る土地になります。彼らが「双葉郡のことを考えよう」と言われても、当事者意識を持つのは難しいのが現状です。そこで、彼らの興味や関心と地域の特徴を結びつけることで、少しずつ関心を持ってもらう工夫をしています。例えば、生徒が好きなことや興味のある分野と地域の資源を結びつけるサポートをすることで、「この町には自分が興味を持てるものがある」と気付くきっかけを提供しています。ただ、それを自分一人で見つけるのは難しいため、教育プログラムの中で自身の振り返りや対話を通じて、生徒たちが自ら気づく機会を作っています。
地域、そして次の世代を支える存在へ
「双葉みらいラボ」 の活動は、7年以上の歳月を経て、内容や手法が着実に整い、学習支援から探究学習、キャリア支援へと広がりながら、より多様な形で展開されています。また、卒業生たちが頻繁に訪れてくれることは、在校生にとって大きな刺激となっています。先輩の視点から地域のことを学ぶ機会も多く、在校生の中には「卒業後、自分もまた戻ってきたい」と感じる生徒も増えています。こうしたつながりが生まれ、次の世代へと受け継がれていく様子を見られることは、とても嬉しく思います。生徒たちが卒業後も地域や学びの場と関わり続け、次の世代を支える存在へと成長していくことが、この活動の大きな意義であると改めて実感しています。
様々な地域から集まり、ともに学ぶ学校

広野町には県外からの移住者が増えていますが、さまざまな地域から集まった生徒たちが互いの違いを理解し、共に学ぶことで、探究活動がより豊かになると感じています。
また、移住者の親御さんにとっては、子どもが新しい環境になじめるか、不安に思われると思います。ですが、ふたば未来学園では学年を超えた交流も活発で、「双葉みらいラボ」としてのサポートもありますので、スムーズに学校に馴染める環境が整っていると思います。
この地域だからこそできる学びを

ふたば未来学園は、福島県内において先進的な教育モデルを築いてきました。しかし、少子化の影響もあり、学校教育にはさらなる変革が求められています。今後は、ふたば未来学園で培った教育モデルを県内の他の地域へと広げていくことが重要になります。ふたば未来学園が「この地域にあってよかった」と思われる存在となることが大切です。ふたば未来学園の開校当初は、「復興のための学校」という位置づけが強かったかもしれません。しかし、これからの10年を見据えたときに、「この地域だからこそできる学びとは何か?」を問い続けることが重要になります。今ここで生まれている「探究する文化」や「地域と関わりながら学ぶ姿勢」は、未来へと続く大きな財産です。ふたば未来学園がこれからも成長し、地域とともに歩み続けることで、新しい教育のモデルを築いていくことを期待しています。
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