子どもの目をもったお医者さま 額賀誠志
みなさんは、『とんぼのめがね』の舞台が当町であることをご存知でしょうか?
とんぼのめがね作詞者の『額賀誠志』氏は、昭和12年当時無医村であった広野村(当時は村)に内科医院を開業していました。このころの先生は執筆活動を休んでいましたが終戦後(昭和21年ごろ)より活動を再開することになります。下記はその理由を額賀氏が情熱的に話をしたときの言葉です。
『戦後日本の子どもたちは、楽しい夢をのせた歌を歌えなくなった。子どもが、卑俗な流行歌を歌うのは、あたかも、煙草の吸いがらを拾ってのむのと同じような悲惨さを感じさせる。私が久しぶりに、童謡を作ろうと発心したのも、そうした実情が余りにも濁りきった流れの中に置き忘れられている現状である。しかし、私は子どもたちを信じ、日本民族の飛躍と将来とを堅く信ずる。この子どもたちが、やがて大人になる頃には、おそらく世界は自然発生的に、その国境を撤廃し、全人類が一丸となって愛情と信頼と平和の中に、画期的な文明を現出する時代が来るであろう。その時に当って、若い日本民族が世界に大きな役割を果たすことを信じ、いささかなりとも今日子どもたちの胸に、愛情の灯をつけておきたいのである。』
『とんぼのめがね』は、昭和23年頃上浅見川の箒平地区に先生が往診へ行った際、子ども達がとんぼと遊んでいるのをみて作詞されました。そして平井康三郎氏の曲により、ラジオ放送で全国に広まり代表作として残ることになりました。先生の作品はこの他にも多数存在します。
プロフィール
額賀 誠志(ぬかが せいし) 1900~1964(明治33年~昭和39年)
本名:額賀 誠(ぬかが まこと) 医師、作詞家
石城郡(現 いわき市)四倉町生まれ
日本医科大学卒業後、1937~1964(昭和12年~39年)まで広野町で医院を開業。
日本作家者協会員であり、鈴木三重吉の「赤い鳥」同人の童謡作家。
昭和23年福島県重量挙げ協会の設立に尽力、初代会長を務め、重量挙げによって福島県スポーツ界の全国的地位を高めた。
額賀誠志作品
- 秋の声 作曲者:草川 信
- いたちっこ 作曲者:草川 信
- お月さんのうた 作曲者:草川 信
- 閑古鳥 作曲者:草川 信
- シグナルさん 作曲者:小村 三千三
- たけうまごっこ 作曲者:平井 康三郎
- たにし 作曲者:草川 信
- どんと波こい 作曲者:草川 信
- とんぼのめがね 作曲者:平井 康三郎
- 虹の橋 作曲者:草川 信
- ねんねんころりん 作曲者:草川 信
- 浜防風 作曲者:草川 信
- 春風 作曲者:草川 信
- 筆の花 作曲者:草川 信
- 山のお医者さま 作曲者:草川 信
作品の中では草川氏による曲が多く見受けられますが、かなり親しい間柄だったようです。そのことを裏付けるエピソードがあります。
額賀氏は、草川氏の長男が戦死したときに「愛児を喪える草川信氏へ捧ぐ」と前書きして哀悼を込めた詞を贈りました。そのことに大いに感激した草川氏は直ちに曲を付けて発表し額賀氏に応えたということです。その作品が『閑古鳥』だと言われています。
額賀誠志氏は本業の医師としての評判も良く、「医は仁術」という言葉を地でいく人柄で、本当に貧しい人からは診察料を取らないと言う温情があり、地元の人々からは神様のように畏敬されていました。また患者だけではなく誰に対しても面倒見がよかったので、有名な小説家や当時無名の放浪の詩人たちが長期間滞在していきました。その中には、「芥川賞」の富澤有為男氏、「直木賞」の木村不二男氏、「丘を越えて」の島田芳文氏、その後有名になった「赤胴鈴之介」の武内つなよし氏、「月光仮面」の川内康範氏がいたといいます。
また、額賀氏は文芸活動だけではなくスポーツ振興にも力を入れていて、福島県に重量挙げを導入した第一人者であり、福島県重量挙げ協会の初代会長を努めています。
秋の声
林檎畑に
風が吹く
さらさらさらと
母さんや
誰かきたよに
おもわれて
お背戸に出れば
星一つ
林檎畑の
青い葉に
ひそひそ 秋の
聲がする
いたちっ子
すすき 穂すすき
いたちっ子 ほい
こちら おがんで
ちょろりこ ほい
白い月夜を
にげてった にげってた
白い月夜を
にげてった にげてった
お月さんの歌
お月さん 光れ
照れてれお月さん
お山も海も
みんな みんな きらきら
きれいに光れ
お月さん 光れ
にこにこお月さん
子供もにこにこ
みんな みんな にこにこ
仲よく歌へ
お月さん 光れ
まんまるお月さん
心もまるい
みんな みんな まんまるい
輪になって踊れ
閑古鳥
山は日暮れて
風が吹く
なぜにお眠(よ)らぬ
閑古鳥
山また山を
たづねても
呼ぶ子呼ぶ子は
夢の国
早よはよお眠(よ)れ
出る月が
呼ぶ子の姿
映(うつ)そもの
シグナルさん
あおいめがねの シグナルさんが
おててをさげて さあどうぞ
おとおりなさいと しらせているよ
きしゃ きしゃ はしる
シュッポシュッポ はしる
あかいめがねの シグナルさんが
おててをあげて おまちなさい
おとまりなさいと しらせているよ
きしゃ きしゃ とまる
ガッタンポと とまる
たけうまごっこ
たんたん たけうま
おうまだ ほぅい
ぽっか ぽっか かけあし
それ まわりあし
たけうま ごっこで
のはらへ でたよ
たんたん たけうま
うさぎだ ほぅい
ぴょん ぴょん かたあし
それ くぐりあし
たにし
たんたん たにしが むこさんにまいる
金ぐらしょって のったりこ
のったり のったり ころりと
下の田にまいる
ぽかぽか お日和 水田はぬるむ
おとものたにしは こっくりこ
こっくり こっくり ころりと
いねむりござる
たんたん たにしが むこさんにまいる
春の日ながを のったりこ
のったり のたっり ころりと
蔵しょってまいる
どんと波こい
どんと どんと波こい 沖からこい
大波 小波 ならんでこい
赤い夕日に きらきら光り
どんと どんと どんと
渚の影を あらいにこい
どんと どんと波こい 仲よくこい
大波 小波 つづいてこい
父さんお船は 遠い海よ
どんと どんと どんと
うれしいおたより のせてこい
どんと どんと波こい いそいでこい
大波 小波 ここまでこい
日ぐれの浜へ むかいにきたに
どんと どんと どんと
父さんお船は いつ帰る
とんぼのめがね
とんぼのめがねは 水いろめがね
青いおそらを とんだから
とんだから
とんぼのめがねは ぴかぴかめがね
おてんとさまを みてたから
みてたから
とんぼのめがねは 赤いろめがね
夕焼け雲を とんだから
とんだから
虹の橋
虹の七色太鼓橋
ああれ 狐の殿さまが
花嫁御寮を お迎えに
向こうのお山へわたるとき
水をまきまき 懸けるとさ
虹の七色太鼓橋
狐がとおった あとからは
月のお国へ餅搗きに
兎の親子が杵もって
空をはねはね わたるとさ
虹の七色太鼓橋
ばあやの お里は見えないか
あしたは うれしい宵まつり
角兵衛獅子の可愛い子も
笛をふきふきいったとさ
ねんねんころりん
ねんねんころりん ねんころりん
ねんねの小窓を とんとんと
たたくはいたちか わるだぬき
いえいえ おせどの かやのみよ
ねんねんころりん ねんころりん
坊やは泣かぬに ほうほうと
よぶのはお山の ごろすけか
いえいえ 野を行く 汽車の笛
ねんねんころりん ねんころりん
ねんねのお庭を さらさらと
かけるは親ない こぎつねか
いえいえ こがらし 風の子よ
ねんねんころりん ねんころりん
坊やはねたのに ちらちらと
のぞくはさびしい 一つ星
いえいえ ねられぬ お月さま
浜防風
防風は
身に泌む 匂い
ほんのりと
雪の白足
かなしいか
摘めば なよなよ
お日さまに
凋れ凋れて
防風よ
僕も 聴いてる
砂山に
海の遠鳴り
春風
春が来たよと
春風が
垂れ柳にささやいた
風のうわさに
眼を覚し
お池の田螺は戸を開けた
春が来たよと
春風が
木ごと木ごとにささやいた
風のうわさに
裏山の
蓑虫さんは蓑脱いだ
筆の花
つんつん土筆は 筆の花
いついつ描いた 青空に
ほんのり白い お月さま
あれあれ蝶々が きょうもまた
花にとまって ひそひそと
なにを描くのと きいている
つんつん土筆は 筆の花
ゆうべになれば 青空に
きれいな星を 描くでしょう
山のお医者さま
山から出てきた お医者さま
啄木鳥さんは 縞ズボン
赤いソフトを ちょいとかぶり
幹から枝へ こっつこっつこっつんつん
病気の枝は ありますか
こっつんつん こっつんつん
こっつん こっつん こっつんつん
さあさ診察いたします
森の奥から お医者さま
啄木鳥さんは 白チョッキ
松さん あなたに瘤がある
どれどれみましょう こっつこっつこっつんつん
診察料は いりません
こっつんつん こっつんつん
こっつん こっつん こっつんつん
いくらほっても 虫がない
谷の中から お医者さま
啄木鳥さんは 黒マント
杉さん あなたは手がいたむ
どれどれみましょう こっつこっつこっつんつん
おやおや虫が おりますね
こっつんつん こっつんつん
こっつん こっつん こっつんつん
大きな虫が とれました
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