二地域居住アーティスト・イン・レジデンス2023
プロジェクト概要
広野町では、アーティストが地元の文化やコミュニティと深くかかわる「二地域居住アーティスト・イン・レジデンス」事業を令和4年度よりスタートしました。このプロジェクトでは、全国から選ばれたアーティストが広野町での生活と制作活動を通して地域と関わり合い、町民の皆さんと新しいつながりを生み出します。
アーティストは町内で一定期間を過ごしながら、自身の創作活動に取り組むとともに、町民の皆さんとの交流やワークショップの開催を通して、町の魅力を発信していきます。この取り組みにより、町はアーティストの創造的な活動や地域への貢献が町の魅力を高め、移住を検討する新たな人々や新たなアーティストにとって魅力的な場所となり、地域全体の活気や定住を後押しする効果を期待しています。
プロジェクトテーマ
広野町の伝統的な小正月の行事である「酉小屋」をテーマとした現代アート作品づくりに挑戦していただきました。
酉小屋は竹や藁などで小屋を建て、お正月飾りや古い御札と共に燃やし、一年の無病息災を祈念する行事です。
広野町における酉小屋の成り立ちは、子供中心の行事で、田畑にくる鳥を追い払おうとする予祝の一つとされ、あとでその小屋を焼くのは小正月の火祭りと結びついたものと言われています。昔は広い地域で酉小屋の行事が行われていましたが、今では2か所のみで行われています。
アーティストによる作品は、広野町の自然や文化、人々との交流からインスピレーションを得て制作されたものです。制作された作品は、専用の作品ギャラリーページでご覧いただけます。
参加アーティスト詳細
2023年には、2名のアーティストが参加します。それぞれのアーティストが持つ専門的な知識や技術を活かし、次のような活動を予定しています。
参加アーティスト_青木みのりさん
山形県長井市の出身、山形市に在住。
2016年に東北芸術工科大学大学院の芸術文化専攻洋画研究領域を修了。大自然の恐ろしさと美しさをテーマに絵画を制作。また、母校の東北芸術工科大学の研究プロジェクト「東北画は可能か」にも参加している。
自己紹介
山形県山形市在住アーティストの青木みのりです。私は、山や自然が持つ「理不尽さ」や「暴力性」、あるいは「災害」といったものをテーマに、平面作品を制作しています。
広野町の印象
火力発電所の煙突が印象的です。町内どこからでも見えます。元々、高速道路の高架橋といった、田舎の景色の中にある巨大建造物が大好きなので、広野の煙突のある風景は本当にカッコいいと思っています。また、意外と坂が多いという印象です。勝手な思い込みですが、もう少し平野なのかと思っていました。今回は車で来たので坂道もへっちゃらですが、体力作りも兼ねて、ホテルからスタジオのあるひろの未来館まで歩く日を増やしたいと考えています。
あとは海です。山の人間なので、海が見えるだけでテンションが上がります。ちょうど今日(12/20)、ひろの未来館で作業していたところ、航行中のさんふらわあ号が見えました。他にも色々な船が広野沖を運航していて、見ていて楽しいです。
意気込み
少しでも広野のみなさんと現代アートの距離が縮まるよう頑張ります。12/17に、広野町民のみなさん向けのWSを開催しました。内容は「海のお話を聞かせていただく」といったものです。簡単に紙に印象に残った海のイメージや出来事を書いていただきました。今は見ることができない、広野の海岸線の姿や、避難先で見た海の話、震災時の海、海の音…等、様々な「海のお話」について伺うことができました。みなさんのお話を作品に活かすことで、現代アート、そして鳥小屋というイベントが、身近に感じられるようにしたいです。
こんな作品を作りたい
今考えているプランは、鳥小屋が行われる田んぼを雪景色に変えることです。私の地元である山形県長井市にも「ヤハハエロ」という、鳥小屋と似た行事があるのですが、ヤハハエロは雪の田んぼのど真ん中で行われていて、その光景がヒントになっています。もし広野に雪が積もったらどうなるのか?海はどのような色に見えるのか?広野は風が強いので、吹雪いて海そのものが見えなくなるかも…?ということを考えながら、制作していきたいと考えています。
参加アーティスト_ナディン・バルドウさん
ドイツのドレスデン生まれ、ベルリン在住。
2018年にドレスデン美術大学にてマイスターシューラー(芸術学博士)を授与される。アイルランド、リトアニア、スロベニア、インド、韓国、ポーランドなど世界各地でその土地で集めたものを使う彫刻作品の制作を行っている。
自己紹介
私はベルリンで活動しているアーティストで、特に環境に合わせて制作する立体作品を専門にしています。私の作品の特徴は「人新世」という考え方を使っているところにあります。「人新世」とは、人類の活動が地球の表面を大きく変えている時代という意味です。
私は広野町で「自然」と「文化」の関係を知りたいと考えています。広野町の風景は、自然にも文化にも深く影響されているように思います。
私はこれまで世界中を旅してきましたが、津波というものをきちんと想像することができません。そのため、東日本大震災や津波のような恐ろしい災害を経験した広野町の皆さんが、「自然」をどのように見ているのかを知りたいです。
私は来日してから車で広野町に来ました。高速道路は渋滞気味でしたが、この移動も素晴らしい経験でした。幾つものトンネルが続く山の中を走り抜けると、高速道路は霧に包まれた深い森へと入っていきました。初めて道路脇の線量計を見たとき、私は奇妙な警戒心を持ちました。そこに表示されている数字が「安全」であることの証明であることは理解できましたが、それでもそこに線量計が設置されているということは、この地で災害が起こったことを意味しています。日本に来てから伺った話を思い出しながら、私は様々な変化に対して「自然」がどう適応するのかをあらためてじっくりと考えました。
ワークショップを通して
12月に現代アートのワークショップを行いました。広野町の皆さんが私の作品に興味を持ってくれたことはとても嬉しかったです。また、私が持ってきた風景写真を参加者の皆さんが各自選んでから、それぞれの写真について語り合う作業を通して(これは私のワークショップの一部です)、私たちはお互いをより深く知ることが出来ました。
青木みのりさんのワークショップもとても面白いものでした。また、広野町の住民の方々が海について話をしてくれた時には、皆さんが素直に自分の経験を語ってくれる様子に感銘を受けました。
福島県浜通りを巡って
私たちは津波と原子力災害の爪痕が残る地域を見て回りました。これらの地域の風景が2011年に起こった津波によって形作られているということを私は痛感しました。全く木が生えていない場所を私は幾つも見かけましたが、そうなった理由は一つしか思いつきません。また東日本大震災・原子力災害伝承館に向かう途中には、人々が住んでいる家々の間に廃屋が点在している光景を目にしました。こうした風景も、伝承館そのものの見学も、とても重いものでした。そして私はこのような傷を癒そうとする人々の取り組みに心から感動を憶えました。
今回のアーティスト活動について
この浜通り地域での滞在経験は、今後の私の作品にとてつもなく大きな意味を持つと思っています。私の頭の中では早くも「自然」と「文化」についての見方、それらがお互いに与え続ける影響についての捉え方が変化しはじめています。
私は「鳥小屋」作品づくりで大忙しになるでしょう。私は広野町とその周辺について、出来るだけ多くのことを学ぼうとも考えています。
完成作品
広野町で生まれたアート作品の一部を、専用の作品ギャラリーページで公開しています。ぜひご覧ください!
このページに関するお問い合わせ
広野町役場 復興企画課
〒979-0402 福島県双葉郡広野町大字下北迫字苗代替35番地
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