磐城平の城主であった内藤左京太夫様は、御領分の中で盛んに新田の開発を勧めていました。このような折に、折木村に住む忠五郎という者も、村の山根際の谷間辺りで、八反歩ほどの土地を切り開いていました。
しかし、激しい労働の疲れからか、ついに脚気に罹り、三年ほど歩くこともできない不自由な身体になってしまいました。医者にもかかっていろいろな薬も飲んでみましたが、効果も無いので悲嘆に暮れる毎日を過ごしていました。そこで、この地の大鎮守である広野宮に御加護を願おうと、信心発起して十七日間の間、昼夜を分かたずに祈願しました。
そのようなある日のこと、片脚の傷ついた一羽の鷲が飛んで来て、生い茂った藪の中に入って行くのを見ました。不思議に思った忠五郎は、その藪の中に分け入ってみると、岩間から湧き出た泉に鷲が傷ついた脚を浸していました。鷲は一日に何度となく飛んできては脚を浸していましたが、十七日も過ぎた頃、足の傷も全く癒えたのでしょう、いずこともなく飛び去って行きました。
不思議に思った忠五郎は、この湧き出る水を汲んで家に持ち帰り、風呂として焚いて二度三度と入ってみたところ、身体の痛みも漸く治りました。そこで、これこそ霊験ある湯であろうと、毎日入湯したところ、病も治り元の身体になりました。忠五郎は急いで大鎮守の広野宮に参詣し、神主に一部始終を話したところ、「信心深い貴方に神の御加護があったのです」と言われ、益々信仰の心を固めました。
元禄十二年四月八日に広野宮の神主猪狩伊賀守橘常満が、この地に「大己貴命」、「小彦名命」を湯泉大明神として祀り、鷲によって発見されたことに因んで鷲湯と名付けました。
そんな折木温泉は、特に神経系の病気に特効があるとして今も親しまれています。
また、近くにはトレッキングもできる五社山があり、紅葉など季節の彩りが楽しめます。




